東京高等裁判所 昭和49年(ラ)386号 決定 1974年8月10日
抗告人 甲野一郎
右代理人弁護士 中野高志
相手方 乙山花子
事件本人 乙山春子 昭和四四年一月二五日生
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣旨は、「原審判を取り消す。事件本人の親権者を抗告人に変更する。」との裁判を求めるというにあり、その理由は、別紙「抗告の理由」(一)(二)に記載のとおりである。
これに対する当裁判所の判断は、原審判の理由説示と同一である。親権者の意思に基づかないでその親権に服する子を他人の養子として手渡すことは許されないことであるので、親権者である相手方の親権に服する事件本人を他人の養子として手渡すために親権者の変更を申立てているとみられる本件申立は、現に事件本人が昭和四五年九月以降第三者夫婦(養子縁組先)を親と思いなついていることを考慮に入れても、相手方が事件本人を他人の養子として手渡すことに強く反対し、事件本人を自己の手許で養育する意思と能力も有していると認められる以上、相当でないというほかない。もっとも、相手方と事実上の養親丙川二郎、同夏子との間は円満に話合いができる間柄と思われるので、適当な時期に事件本人の意思も確めた上双方間で、直接、養子縁組の件を話合い円満解決することが望ましい。
よって、本件抗告は理由がないのでこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 伊藤利夫 裁判官 小山俊彦 山田二郎)
<以下省略>